2024年からNISA制度が新しく変わるのをご存じでしょうか?NISA制度とは、株式投資や投資信託などの利益に係る税金が非課税になる制度です。
2021年6月末に日本証券業協会により調査された情報によると、一般NISAの口座開設数は761万口座で、その内投資未経験ではじめられた方の割合は45.3%でした。
このように、一般NISAは約過半数の方が投資未経験になっており、「投資を始める第一歩」としてNISA制度を利用される方が多いです。
今回の記事では、下記について説明します。
- 一般NISAと新NISAの違い
- 新NISAで2階だけ利用できる条件
- ロールオーバーとは?
- 新NISAのメリット・デメリット
- 非課税期間終了後の流れ
この記事を読めば、2024年から変わる「新NISA制度」について理解できるようになるでしょう。
参照:日本証券業協会
一般NISAから新NISAへ!新NISA制度どう変わる?
変更点 | 一般NISA | 新NISA |
---|---|---|
利用できる人 | 日本にお住まいで口座開設する年の1月1日現在で20歳以上の方 | 変更なし |
非課税期間 | 5年 | 変更なし |
非課税投資枠 | 年間120万円 (5年間で最大600万円) | 年間122万円 1階:20万円 2階:102万円 |
投資可能期間 | 2014年〜2023年 | 2024年〜2028年 |
投資対象商品 | 株式、投資信託、ETF、REIT | 1階:金融庁が認めた商品 2階:株式、投資信託、ETF、REIT |
口座開設 | 1人1口座(つみたてNISAとの併用不可) | 変更なし |
非課税対象 | 譲渡益、配当金、分配金 | 変更なし |
ロールオーバー | 〇 | 変更なし |
金融機関変更 | 各年ごとに変更可能 | 変更なし |
まず「一般NISA」から「新NISA」へ名称変更されたのが大きなポイントです。
非課税期間は5年間で変わりないのですが、2023年までしか利用できなかった一般NISAの投資可能期間が長くなりました。
さらに、新NISAは一般NISAと比べると複雑になり「2階建て」という新しいルールがつくられ、非課税投資枠も増えたので順番に説明していきます。
投資期間が5年間延長
新NISAでは、2024年から2028年までの5年間が投資可能期間になります。
この投資可能期間は新規買付ができる期間のことです。そのため、実質最長で2032年まで利益に対して課税されずに運用できるようになります。
例えば、2028年に新規で株式に投資をした場合、2032年までの利益が非課税になります。
また、今まで「一般NISA」を利用されていた方は自動的に「新NISA」に変更になるので、特に手続きは必要ありません。
参照:金融庁「新NISA制度の概要と改正の狙い」、金融庁「NISAの概要」
新NISAは2階建てに変更
一般NISAと新NISAで大きく変わったポイントになります。変更内容が複雑なので丁寧に説明していきます。
新NISAの1階と2階の違い
新NISAでは、1階と2階に分けて運用をするようになりました。さらに、対象商品と目的が変わってきます。
1階のつみたて投資は、つみたてNISAと同じで金融庁に認められた投資信託のみに投資ができます。また、1階は安全的な資産形成を目的とした制度のようです。
2階は、従来の一般NISAと同じで、株式と投資信託、ETF、REITの商品に投資ができます。(整理銘柄、監理銘柄、レバレッジの効いた投資信託は除外)
長期で株を保有しながら資産を増やしていくことが2階の目的になります。
このように「1階ではコツコツと投資をして安全的に資産を増やし、2階ではアクティブに投資をして資産を増やしてください。」という制度になっているようです。
新NISAのルール
新NISAの2階建てルールとして、まず1階のつみたて投資を設定してからでないと、2階では投資ができないようになっています。
ただし、1階の非課税投資枠20万円を全て使い切る必要はありません。1階で少額でもつみたて投資をすれば、2階で株式やETFなどに投資ができます。
このルールの背景には「安全的な資産形成を促進する」という目的があります。今まで一般NISAで株式やETFなどをメインに投資をしていた方に対して、つみたて投資や分散投資などをはじめてもらうために作られた仕組みになるのではないでしょうか。
そのため、2階で株式やETFなどに投資をしたい方は、1階で少額からのつみたて投資を設定すればいいでしょう。証券会社によっては最低100円からつみたて投資がはじめられます。
非課税投資枠が122万円に増加
非課税で投資できる額が、一般NISAの時は「120万円」でしたが、新NISAでは「122万円」になり2万円増加しました。
ただし、新NISAの122万円は1階と2階を合算した非課税投資枠になります。1階は「20万円」で2階は「102万円」となり、非課税投資枠が分かれています。
2階は株式やETFなどの投資だけで、1階は「つみたて投資」限定の利用になるので注意しましょう。
新NISAで2階から投資できるケース
上述しましたが、新NISAではまず1階でつみたて投資をしてから、2階で株式やETFなどに投資ができます。
しかし、新NISAを利用する人の中には「1階のつみたて投資はしなくてもいい。2階だけで投資をしたい。」という方もいらっしゃるかもしれません。
そのため、以下の例外に当てはまる方は1階を利用せずに、2階から投資ができるようになります。該当する方は、申請をしないと適用されないので忘れずに申請しましょう。
- 2023年までに一般NISA口座を開設していた方
- 上場株式等の取引を過去にしたことがある投資経験者の方
1つ目は、一般NISAを利用していた方のみ対象です。一般NISAから新NISAに自動的に変わった方は2階から利用できます。
しかし、まだ細かい情報が公開されていないため「一般NISAの口座は持っているが一度も取引をしたことがない方」や「一般NISAからつみたてNISAに口座変更した方」などが対象になるかは、現時点ではわかっておりません。
2つ目は、上場株式投資等の経験がある場合は1階を利用せずに、2階から投資をすることができます。2階部分だけを利用したい場合には、「1階部分」を利用しないことを証券会社等に届けることで手続きができます。
1階でつみたて投資をせずに、2階だけを利用する場合は「上場株式」に限られているので「投資信託やETF、REIT」には投資できません。
そのため、2階で個別株・投資信託・ETFなどに投資をしたい方は、少額でも1階でつみたて投資をしてから、2階で投資をしましょう。
ただし、1階を使わずに2階だけしか利用しなかった場合、非課税投資枠は102万円が限度になります。いままで、一般NISAで枠いっぱい投資をしていた人にとっては、少し損した気分になるかもしれません。
新NISAのロールオーバーについて
ロールオーバーとは、NISA口座の非課税期間が終了したあとに、翌年の非課税投資枠に移動させることを「ロールオーバー」といいます。(以下「乗り換え」)一般NISAと新NISAどちらもやり方は変わりません。
例えば、2016年から一般NISAで株式を保有していた場合、5年後の2020年には非課税期間が終了します。終了した後、2021年の非課税投資枠に移動させることで、さらに5年間非課税で運用できます。
それでは、新NISAへの乗り換え方について解説します。
一般NISAから新NISAへ乗り換えする場合
一般NISAで保有している商品の非課税期間が終了した場合でも、新NISAへ乗り換えすることが可能です。
ただし、一般NISAから新NISAに乗り換えするときは時価ベースになるので、利益が出ているとその分乗り換えする時の額が多くなります。
また、新NISAに乗り換えする場合、2階の102万円から優先して消費されます。乗り換えする額が102万円以内の時は、余った分その年の新規買付が可能です。
しかし、乗り換えする額が102万円以上122万円以内の時は、1階の非課税投資枠20万円も合わせて乗り換えすることになります。
新NISAの非課税投資枠122万円超えの額を一般NISAから乗り換えする場合は、その年の非課税投資枠を全て使うことになりますが、全額乗り換えが可能になります。
例えば、一般NISAで保有している株式が合計200万円であっても、新NISAの非課税投資枠に全額入れることができます。ただし、非課税投資枠は全て使うことになり、その年の新規買付はできなくなるので、注意しましょう。
1階のつみたて投資を乗り換えする場合
新NISAの1階でつみたて投資をしていて非課税期間が終わった場合、つみたてNISAに乗り換えすることができます。
さらに、つみたてNISAに乗り換えする時は薄価ベースになります。簿価とは購入した時の価格なので購入時より利益が出ていたとしても、購入した時の額で乗り換えができます。
例えば、新NISAの1階で10万円分つみたて投資をしたとします。5年後に時価が30万円に上がったとしても、当時の購入価格10万円でつみたてNISAに乗り換えができます。
つみたてNISAの非課税投資枠は40万円なので、10万円分つみたてNISAに乗り換えしても、残りの30万円分はその年に新規買付が可能になります。
一般NISAを新NISAに乗り換えするときは、時価ベースなので勘違いしないように注意しましょう。
参照:金融庁「新NISA制度の概要と改正の狙い」
新NISA制度のメリット
既に一般NISAの口座を持っている方は非課税期間が最大10年に延長されます。株式投資をメインに投資している方は、一般NISAの非課税期間が終了した後に課税口座に移行するよりも、引き続き新NISAを活用される方がメリットは大きいかもしれません。
また、今まで一般NISAで「株式投資」と「つみたて投資」の両方をしていた方は、新NISAに魅力を感じている方も多いのではないでしょうか。
一般NISAでつみたて投資をしていて、新NISAの2階に乗り換えをした場合でも最大で10年しか非課税期間は伸びません。この場合だと、そこまでNISA制度のメリットを感じられないでしょう。
しかし、新NISAの1階でつみたて投資をして、つみたてNISAに乗り換えをした場合「最大25年間」非課税でNISA制度を活用できます。
一般NISAから新NISAの2階に乗り換えをするよりも、新NISAの1階からつみたてNISAに乗り換えた方が、15年も長く非課税で運用することが可能になるのです。
このように、NISA制度を利用すると利益に対して非課税になることに加え、新NISAによる非課税期間の延長は大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
新NISA制度のデメリット
つみたて投資に興味がない方には、非課税投資枠が120万円から102万円に減ることになります。
また、上場株式のうち整理銘柄・監理銘柄・レバレッジの効いた投資信託は除外されます。今まで一般NISAでハイリスク・ハイリターンな金融商品に102万円以上投資をしていた方には、残念な改正といえるでしょう。
一般NISAと新NISAの終了後はどうなる?
一般NISAの非課税期間が終了した場合は、新NISAに乗り換えするといいでしょう。現在一般NISAを利用している場合は、2024年になると自動的に新NISAへ変更されます。
しかし、新NISAの非課税期間が終了した商品に関しては、一般口座や特定口座などの課税口座に移行して株を保有し続けるか、売却して利益を確定させることになります。
もし、今後新NISAの非課税期間が延長されたり、新しいNISA制度ができたりするとそちらに乗り換えできるようになるかもしれません。
まとめ
ここまで「新NISA」の制度内容についてまとめてきました。従来の一般NISAと比べると内容が複雑になって、難し部分が多いかもしれません。
今回の新NISAへの変更点は3つありました。
- 投資可能期間が5年延長(2024年〜2028年)
- 新NISAは2階建てに変更
- 非課税投資枠が120万円から122万円に増加
新NISAの2階建てとは、1階がつみたて投資専用になっており、2階が今までの一般NISAと同じ制度内容になってきます。
しかし、整理銘柄・監理銘柄・レバレッジの効いた投資信託は除外されます。そのため、今まで一般NISAでこのような金融商品に投資していた方は注意が必要です。
株式やETFなどに投資をしたい方やつみたて投資と株式投資どちらもしたい方などには新NISAがおすすめです。
投資は少しでも早くはじめた方が、複利効果に期待できます。投資で得た利益を再投資にまわすことで、雪だるまのように利益が増えていく仕組みのことを「複利」と言います。
さらに、通常は投資の利益に対して「20.315%」の税金がかかりますが、NISA制度はこの税額を非課税にすることが最大のメリットです。NISA制度を利用しながら複利の力で資産運用される方がいいでしょう。
活用年数が限られているNISA制度なので、今から投資を始めるか迷われている方はできるだけ早く始めましょう。
(文:陽髙百)
アメリカの大学で経済・会計学を学ぶ。Associate degree(准学士号)を取得後、不動産事務やWeb広告営業など様々な業界を経験。現在は、ファイナンシャルプランナーとしてWebライターの活動をしながら自身のブログやSNSで20代に向けて「お金の基礎知識」について発信している。