フリーランスは年金受給額が少ないので、資産運用をして老後資金を準備しようと考える方もいらっしゃるでしょう。
毎月積立可能な「つみたてNISA」と「iDeCo」について聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。つみたてNISAとiDeCoは、それぞれ制度内容は違いますが、どちらも節税効果が期待できる制度になっています。
今回の記事では、下記について説明します。
- つみたてNISAとiDeCoの違い
- つみたてNISAのメリット・デメリット
- iDeCoのメリット・デメリット
- つみたてNISAとiDeCoどちらがおすすめか
- つみたてNISAとiDeCoの併用について
この記事を読めば、「つみたてNISAとiDeCoの違い」について理解でき、どちらが自分にあっているかわかるようになるでしょう。
つみたてNISAとiDeCoの違いとは?
つみたてNISA | iDeCo | |
開設できる人 | 日本在住で口座開設する年の1月1日現在で20歳以上の方 | ・自営業者、フリーランス、学生など(日本に居住している20歳以上60歳未満)・厚生年金の被保険者(60歳未満のサラリーマンや公務員など)・厚生年金被保険者の配偶者(20歳以上60歳未満) |
拠出限度額 | 年間40万円 | 年間14.4万円〜81.6万円(月々1.2万円〜6.8万円) |
最低投資額 | 100円〜(証券会社による) | 5,000円〜(1,000円単位で増額可能) |
非課税期間 | 20年 | 決められた期間はなし |
投資可能期間 | 2018年〜2042年 | 60歳まで拠出可能(2022年から65歳に変更) |
非課税・控除対象 | 非課税:分配金、譲渡益 | 非課税:分配金、譲渡益、配当金など控除:掛金・受け取り時 |
対象商品 | 金融庁が定めた基準を満たした投資信託(対象商品) | 定期預金、投資信託、保険商品など |
引き出し制限 | なし | あり(原則60歳まで) |
手数料 | 販売手数料:なし信託報酬:一定水準以下 | 加入時手数料:2.829円運用期間中の手数料:月々171円(最安値)つみたてしていない場合:月々66円(最安値)信託報酬:あり |
※2021年12月時点
つみたてNISAとiDeCoは国が作った制度ですが、それぞれ作られた目的が違います。そのため、制度内容や加入条件などが異なります。
つみたてNISAはNISA制度のひとつで、投資に慣れていない日本人に始めてもらいやすいように作られた制度です。
一方、iDeCoは国民自身で年金を準備してもらうためにつくられました。
このように、目的が異なりますので、制度内容の違いを理解して、自分に合った運用をしていきましょう。
参照:金融庁、iDeCo公式サイト、iDeCoナビ
掛金限度額の違い
つみたてNISAとiDeCoでは、掛金の上限が変わってきます。つみたてNISAは誰が利用しても非課税で投資できる額は一律「年間40万円」です。
一方、iDeCoは誰が利用するかで拠出できる掛金の額が変わってきます。また、会社員のなかでも掛金の額が変わってきます。そのため、iDeCoでは加入資格を確認したうえで、自分の拠出限度額を把握して運用していきましょう。
- 自営業者・フリーランス(第1号被保険者):月々6.8万(年間81.6万円)
- 会社員・公務員(第2号被保険者)
- 会社に企業年金がない会社員:月々2.3万円(年間27.6万円)
- 企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」)と確定給付企業年金(以下「DB」)に加入している会社員:月々1.2万(年間14.4万円)
- 企業型DCに加入している会社員:月々2.0万円(年間24.0万円)
- DBに加入している会社員:月々1.2万円(年間14.4万円)
- 公務員等:月々1.2万円
- 専業主婦(夫)(第3号被保険者):月々2.3万円(年間27.6万円)
自営業者・フリーランスは、国民年金基金または国民年金付加保険料と合わせた額の上限が月々6.8万円になります。国民年金基金と国民年金付加保険料は併用できないためどちらかひとつとの合算になります。
非課税になるケースの違い
つみたてNISAとiDeCoでは、非課税対象や控除になるケースが変わってきます。
つみたてNISAは、運用益に対する税金が非課税です。具体的には、分配金や投資信託を売却したときの譲渡益が非課税となります。
iDeCoもつみたてNISAと同じで、運用益に対して非課税になります。しかし、iDeCoにはその他にも2つの控除があります。
1つ目は「掛金が全額所得控除」になります。掛金が全額所得控除になることで所得税と住民税が軽減されます。
(例)会社員の方で月々2.3万円でつみたてをして、所得税20%・住民税10%の場合
所得税は55,200円・住民税は27,600円となり、合わせて年間82,800円の所得が控除されます。
2つ目は「受け取り時も控除がある」ことです。
受け取り方法は3つあり「年金」「一時金」「年金と一時金の併用」になります。年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が適用されます。
このように、つみたてNISAは「運用益が非課税」になります。iDeCoは「運用益が非課税」「掛金が全額所得控除」「受け取り時の控除」の3つが節税効果をもたらします。
参照:iDeCo公式サイト
売却・出金時の違い
つみたてNISAはいつでも売却して出金できます。しかし、つみたてNISAはいつでも売却・出金できますが、売却してしまうとその年の非課税投資枠が復活するわけではないので注意しましょう。
一方、iDeCoは原則60歳まで出金できません。そのため、収入が安定しないフリーランスにとって、取り崩しができない点でiDeCoの運用はリクスがあることは理解しておきましょう。
ただし、iDeCoも保有している金融商品を売却することはできます。売却して他の金融商品を再購入する「スイッチング」や金融商品の購入割合を変更する「配分変更」が利用可能です。
少額から資産形成できるつみたてNISA
つみたてNISAとは、つみたてNISA口座で購入した投資信託の譲渡益や分配金が非課税になる制度です。非課税投資枠は年間40万円までなので、月に1回つみたてる場合は月々33,333円に設定すると40万円を使い切ることができます。
対象商品も金融庁が定めた基準を満たした投資信託だけなので、販売手数料が0円だったり、信託報酬が安く設定されていたりするので安心です。
投資可能期間は2018年〜2042年までになっており、非課税期間が20年となっています。投資可能期間とは、新規で買付できる期間になります。例えば、2037年につみたてNISAで投資信託を購入した場合、20年後の2056年までの運用益は非課税になります。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAは投資初心者の方が始めやすい制度になっています。そこで、つみたてNISAのメリットを3つご紹介します。
少額からつみたて投資が可能
証券会社によっては100円からつみたて投資が可能になっています。投資初心者の方や投資に不安がある方は少額からつみたて投資を始められるといいかもしれません。
また、自動積立を設定できるため自分で投資するタイミングを考えなくても大丈夫です。生活の負担にならない額を設定しましょう。
譲渡益・分配金が非課税
つみたてNISAの最大のメリットは運用益が非課税になることです。
通常つみたて投資をして利益が出た場合、利益に対して「20.315%」の税金がかかります。しかし、つみたてNISA口座で運用して利益が出た場合は20.315%の税金がかからず、利益を確定させることができます。
出金がいつでも可能
つみたてNISAは現金が必要になったときにいつでも出金できます。
売却してから出金するまでに数日はかかりますが、iDeCoのように60歳になるまで出金できないといったルールはありません。出金したい場合は、早めに手続きをしましょう。
つみたてNISAのデメリット
メリットだけではなく、デメリットも理解しておきましょう。
元本割れのリスクがある
つみたてNISAは元本確保された金融商品はないので、つみたてNISAを始めたばかりのときや株価が暴落したときは元本割れになる可能性があります。
そのため、余剰資金で始められた方が心にゆとりができ、損失が出た際も落ち着いて判断できるでしょう。
売却してもその年の非課税投資枠は復活しない
非課税投資枠の40万円の内すでに15万円つみたて投資をしていて、その15万円分を売却した場合、売却した15万円分が非課税投資枠に復活することはありません。
非課税投資枠の40万円を使い切ると、その年はつみたてNISA口座で投資はできなくなるので注意しましょう。
購入できる金融商品が限られている
つみたてNISAで投資できる投資信託は金融庁が定めた基準を満たした投資信託のみになっています。証券会社によって取扱商品の違いはありますが、数が多いわけではないので、物足りなく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
節税効果があるiDeCo
iDeCoは国民自身で年金の準備をしてもらうために国がつくった制度になります。
そのため、つみたてNISAと同じく運用益が非課税になることに加え、「掛金の全額所得控除」と「受け取り時の控除」があります。この2つの控除を上手に活用できれば節税効果が大きくなるでしょう。
また、iDeCoには2種類の金融商品があり「元本確保型」と「価格変動型」です。「元本確保型」は元本を保証してくれる定期預金と保険商品が対象商品になります。一方、「価格変動型」は投資信託が対象商品になるため、リスクはありますが元本確保型よりリターンが大きくなるように工夫されています。
iDeCoのメリット
節税効果が大きいiDeCoのメリットを3つご紹介します。
掛金が全額所得控除になる
iDeCoは拠出した掛金を全額所得控除にできます。
(例)35歳・年収800万円・月々23,000円の掛金で60歳まで運用した場合:
1年間の節税額は「82,800円」
25年間の節税額は「2,070,000円」になります。
60歳までに約200万円の控除が受けられるのは大きな節税効果といえます。
証券会社に簡単にできる節税シミュレーションがあるので気になる方は試してみてください。
参照:楽天証券
運用中の利益に税金がかからない
つみたてNISAと同じく、iDeCoも運用で得た利益に対して税金がかかりません。そのため、通常利益に対してかかる「20.315%」分の税金を節税できます。
受け取り時にも2種類の控除がある
iDeCoには受け取り時にも控除が適用されます。
年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」を選ぶことができます。このふたつを併用することも可能です。
iDeCoのデメリット
iDeCoのデメリットは3つあります。
原則60歳まで引き出せない
iDeCoは出金時のルールがあり、原則60歳になるまで引き出せません。そのため、余剰金で運用しないと、いきなり現金が必要になったときに引き出せず困ることになるでしょう。
主婦(夫)は控除の魅力がない
所得税や住民税がかからない主婦(夫)の方には、掛金の全額所得控除がありません。そのため、所得控除を目的としてiDeCoを始めることはおすすめできません。
手数料がかかる
iDeCoは、加入時手数料や運用期間中の手数料などがかかってくるので、できるだけコストを少なくしたい方にはiDeCoは合わないかもしれません。
2022年からiDeCoが変わるポイント
iDeCoが変わるポイントは3つあります。
1つ目は「受給開始年齢の引き上げ」です。元々60歳〜70歳までが受け取り可能期間でしたが、2022年4月からは75歳までに引き上げられます。
2つ目は「加入できる年齢が変更」された点です。今までは60歳未満までの方がiDeCoに加入できたのですが、2022年5月からは65歳未満の方まで加入できるようになります。
また、海外移住している方もiDeCoに加入できるようになります。
3つ目は「企業型DCに加入している方も始めやすくなる」ことです。今までは企業型DCを利用している会社員の方は会社の同意が必要でした。しかし、2022年10月からは会社の同意は必要なく自分の意思で決めることが可能になります。
一方、マッチング拠出を利用されている会社員の方はiDeCoとの併用はできないため注意しましょう。
参照:iDeCo公式サイト
つみたてNISAとiDeCoどちらがおすすめ?
上述したように、つみたてNISAとiDeCoでは制度内容が大きく変わってきます。そのため、自分の目的に合った制度を利用される方がいいでしょう。
「つみたてNISA」がおすすめな方:
- 月々5000円以下で少額投資をしたい方
- 自由に出金をしたい方
- 投資初心者の方
- 年間40万円までつみたて投資をしたい方
- 資産形成を目的としている方
「iDeCo」がおすすめな方
- 最低5000円以上から投資をしたい方
- 60歳まで資金を引き出す予定のない方
- 定期預金や保険商品に興味のある方
- 生活防衛資金や今後のイベント費用が十分確保できている方
- 資産運用を目的としている方
つみたてNISAは証券会社によりますが100円からの少額投資が可能で、出金も自由にできます。
一方、iDeCoは節税効果が大きいため、早くから運用を始めるとその分節税メリットを感じられるでしょう。
つみたてNISAとiDeCoは併用できる
つみたてNISAとiDeCoは併用可能です。つみたてNISAでアクティブに運用をしながら、iDeCoの元本確保型商品で安全に資産運用することもできるでしょう。
しかし、併用する際は月々の負担額も多くなります。住宅ローンがまだ残っている方や子どもの教育資金がまだかかる場合などは、よく考えて併用されることをおすすめします。
まとめ
ここまで「つみたてNISA」と「iDeCo」の概要や違いについてご説明しました。
つみたてNISAは、運用益に対して税金がかからず、少額からの投資が可能です。今から資産形成されたい方や投資初心者の方にはつみたてNISAは投資を始めやすい制度になっているでしょう。
一方、iDeCoは運用益が非課税になること以外にも掛金が全額所得控除になったり、受け取り時にも控除があったりと節税効果を重視される方におすすめの制度です。
つみたてNISAとiDeCoに共通することは「長期での運用と相性がいい」ことです。年金受給額が低いフリーランスは、自分で老後資金を用意する必要があります。これらの制度を上手に活用しながら、資産を増やしていきましょう。
(文:陽髙百)
アメリカの大学で経済・会計学を学ぶ。Associate degree(准学士号)を取得後、不動産事務やWeb広告営業など様々な業界を経験。現在は、ファイナンシャルプランナーとしてWebライターの活動をしながら自身のブログやSNSで20代に向けて「お金の基礎知識」について発信している。